中華料理を楽しむなら、絶対に「中華街」は外せませんよね。沢山の有名店がひしめく中、その足下を支える調理器具、中華鍋…驚くことに、中華街の約8割が愛用する中華鍋があると知り、ちょっと調べてみました。
山田工業所[打ち出し中華鍋]
中華街の8割のお店が愛用する中華鍋を作る山田工業所、これだけのお店が使用している理由とは…いったい他の中華鍋となにが違うのでしょうか?
有限会社 山田工業所
横浜市金沢区福浦1-3-29
045-782-5857
山田工業所のはじまりは、先代社長のアイデアから生まれました。戦後、鉄不足の中、どうしたら鍋を作ることができるのか考え、閃いたアイデアがドラム缶の再利用!ドラム缶の底を抜き出し地面に穴を掘り、その上でドラム缶の底をハンマーで永遠叩いて鍋を作り出したそうです。
日本で唯一の「打ち出し中華鍋」を作る山田工業所
一般的な中華鍋は、鉄板を一気にプレスし鍋の形に成形する「プレス式」、製造にかかる手間や時間は非常に少なく大量生産が可能です。
一方、山田工業所の作る中華鍋は「打ち出し式」、プレス式と違い非常に手間ひまかかる中華鍋を、ひとつひとつ職人の技で作られています。この打ち出し式で鍋を作る工法は日本で唯一、山田工業所だけなのです。
打ち出し中華鍋製造過程
厚さ1.6mm の鉄板をなんと 8枚重も重ね、これが最終的に1枚のフライパンになるなんて驚きです!
ハンマーの位置を熟練の職人がハンマーの位置を微調整しながら叩いていきます。その数なんと、30分間で6000回も!何度も叩く事で分子の密度が上がり強度が増します。これは、日本刀を作る時の「鍛錬」と同じ原理で、中華鍋を作ることに加え、鍛えているのですね。
打ち出し後は、余分な縁を切断し研磨、ハンドル等を取り付け完成へ。
山田工業所の中華鍋はメリットだらけ
職人が手間ひまかけて作る中華鍋、打ち出し式の中華鍋だからこその特徴が詰まっています。お料理好きな方なら絶対に欲しくなる逸品になるでしょう。
優れた熱伝導
山田工業所の作る中華鍋は、熱の伝わりが良いため調理の際、素材へ熱の伝わりが速く、強火で一気に調理する中華料理には最適。
野菜を炒める場合、熱の入りが速ければ食感を残すことができ、麻婆豆腐ならば豆腐に味を素早く染み込ませることかできるとのこと。
熱伝導率を高める仕組みは鍋の薄さにあります。
- 縁周りの厚さ: 約1.6mm
- 底面周りの厚さ: 約0.7mm
薄ければ薄いほど熱の伝わりは速く、厚くなれば遅くなります。あえて縁周りを厚くすることで熱伝導を下げ、ハンドル(取っ手)への熱の伝わりを防ぐ工夫がなされています。この技術は場所により叩く回数を変える山田工業所の熟練した職人技でもあります。
鉄の特性として薄くなればなるほど、熱が加わると変形する可能性がありますが、打ち出し式で作られているため密度が高く強度が増しているため変形の恐れもありません。
鉄鍋なのに鍋肌に食材がくっつき難い
何度も叩く事で鍋の表面にはミクロな凹凸ができます。一見すると新品なのに使用感があるようにも感じるかもしれませんが、これが打ち出し式の中華鍋であり、このミクロな凹凸が、食材に綺麗な焼き目をつけ、鍋肌に食材がくっつき難い効果を生み出しているのです。
薄くて軽い中華鍋
極限まで叩き出した中華鍋は熱伝導を考慮して丈夫かつ薄く作られているので、中華鍋自体、一般的なものより軽量。これにより一日中、中華鍋を振る料理人の負担を軽減する役目も果たしているのです。
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